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井岡一翔と田中恒成が大晦日決戦!紆余曲折あった井岡の不安材料は?

井岡一翔(左)と田中恒成Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

WBOスーパーフライ級戦、4階級制覇vs3階級制覇

井上尚弥のKO劇によって活気を取り戻してきた日本ボクシング界で、次なる注目カードが決まった。WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔が、2020年12月31日に東京・大田区総合体育館で同級1位・田中恒成と2度目の防衛戦を行う。

ミニマム級からライトフライ級、フライ級、スーパーフライ級と日本男子選手唯一の4階級制覇を達成した井岡に対し、田中もミニマム級からフライ級まで3階級制覇しており、4階級目を狙っての挑戦。軽量級の日本最強を決める一戦となる。

井岡一翔と田中恒成の比較


かつてミニマム級、ライトフライ級で2階級制覇した井岡弘樹氏の甥・一翔は、東農大時代に北京五輪出場を逃してプロ転向。2011年2月に当時国内最速のプロ7戦目でWBCミニマム級王座を奪取し、翌2012年6月にはWBC王者・八重樫東を破って日本選手初の王座統一を果たした。

同年大晦日にWBAライトフライ級王座を奪って3度防衛、2015年4月にWBAフライ級王座に就いて5度防衛したが、2017年大晦日に突如引退を表明。歌手・谷村奈南との結婚、離婚、父・一法会長が経営する井岡ジムからの移籍など紆余曲折を経て現役復帰し、2019年6月にWBOスーパーフライ級王座を奪取して4階級制覇した。

2019年大晦日に初防衛しており、今回がちょうど1年ぶりのリングとなる。

スーパーフライ級以下の「日本人最強決戦」

一方の田中は2015年5月に国内最速記録を更新するプロ5戦目でWBOミニマム級王座を奪取。2016年大晦日にWBOライトフライ級王座も奪って2階級制覇し、2度防衛後の2018年9月にはWBOフライ級王者・木村翔との日本人対決に勝って、無敗のまま3階級制覇を達成した。12戦目での3階級制覇はワシル・ロマチェンコに並ぶ世界最速記録だった。

初防衛戦で元世界ライトフライ級王者・田口良一に判定勝ちし、2019年大晦日に3度目の防衛を果たした後に王座返上。4本目のベルトを狙ってスーパーフライ級に上げ、現在同級1位にランクされている。

井岡が興国高(大阪)時代に高校6冠なら、田中は中京高(岐阜)時代に高校4冠。井岡がミニマム級から4階級制覇なら、田中もミニマム級から3階級制覇と両者の歩みは似ている。

ただ、元世界王者の甥っ子としてデビュー当時から注目され、陽の当たる道を歩んできた井岡に対し、田中は世界タイトルマッチが全国中継されないなど名古屋ローカルの域を出ず、知名度では劣っている。そのため田中は井岡との対戦を望んできたが、井岡は関心を示さず、ここまで試合が実現しなかった。

コロナ渦で海外での試合が組みにくいこともあり、ようやく実現した一戦。2人と同じくミニマム級から3階級制覇した八重樫東が引退した今、実績から言っても、スーパーフライ級以下の「日本人最強」を決める戦いとなることは間違いない。

気になる井岡の年齢とジム移籍の影響

注目の大一番はどんな展開になるだろうか。溢れるスピードで「負けないボクシング」をする井岡に対し、田中もテクニシャンではあるが真正面から打ち合うことも厭わない好戦的な一面もある。いずれにしても前半での決着は考えにくく、後半までもつれ込むだろう。

往年のスピード、テクニックが健在なら井岡に分がありそうだが、気になるのは31歳という年齢だ。2人とも昨年大晦日以来の試合で、ちょうど1年のブランクは同じだが、31歳と25歳では同じ1年でも肉体面に及ぼす影響は違う可能性がある。パワーは鍛えることで維持、増強できても、スピードや動体視力の衰え、試合勘などはトレーニングで補いきれない場合があるからだ。

かつて親子タッグを組んでいた父親のもとを離れた井岡は、6月にReason大貴ジムからAmbitionジムに移籍したばかり。試合まで2カ月を切っている現段階で、キューバ人トレーナーのイスマエル・サラス氏は来日していない。自身のインスタグラムでは、再婚した夫人との間に授かった長男との幸せな日常を公開しているが、ジムの移籍や生活環境の変化がボクシングに影響しないとも言い切れない。

海外志向の強い井岡は、今回の試合を「メリットはない」と話しており、待ちに待ったチャンスに燃える田中の方がモチベーションは高いように見える。田中が勝てば世界最速の4階級制覇となり、井岡との立場は逆転するだろう。

逆に井岡が井上尚弥のように海外でビッグマッチを実現するためには、自身の「商品価値」を証明できるかどうか、結果だけでなく内容が問われる一戦となる。

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