「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【Bリーグ第11節】今季3試合目の神奈川ダービーは“事前準備”が勝敗を分ける

2019 12/13 11:00マンティー・チダ
神奈川ダービーを知らせるとどろきアリーナのセンターハングビジョンⒸマンティー・チダ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒマンティー・チダ

川崎が2Qで得点を量産して横浜に圧勝、これで8連勝達成

今シーズン3試合目の神奈川ダービーは、川崎のホーム“とどろきアリーナ”に場所を移しての開催。前回は横浜のホームゲームとして2試合行われ、川崎が2連勝としてBリーグ開幕からの横浜戦連勝記録を18としていた。前回の対戦から横浜は外国籍選手が入れ替わり、前節の新潟戦では連勝とし今度こそ勝利を目指して“とどろきアリーナ”に乗り込んだが、川崎が序盤からシュート攻勢で横浜を圧倒する。

川崎は出だしから、#22ニック・ファジーカスと#35ジョーダン・ヒースの3pで幸先よくスタートする。横浜#10アキ・チェンバースのレイアップで2点を返されるが、ファジーカスのフローターとヒースのダンクでさらに加点し、川崎が10-2とリードする。#27熊谷尚也もファストブレイクで12-4としたところで、横浜はタイムアウト。その後、#00ジェームズ・サザランドをコートに入れた横浜が追い上げを図る。#7レジナルド・ベクトンがダンク、#21田渡凌のジャンパー、チェンバースがコーナーから3pを決めて12-11と1点差に接近。川崎はこのタイミングでタイムアウトを請求し、#18鎌田尚也と#21マティアス・カルファニをコートに入れて、ヒースとビッグラインナップを形成。すると、#24大塚裕土とヒースがそれぞれ5得点ずつ稼ぎ、カルファニも3pを沈めて25-17と一気にリードを広げた。横浜#46生原秀将に3pを入れられるが、25-20で川崎がリードして1Qを終了する。

2Q、5点リードの川崎がカルファニのスティールで攻撃権を奪うと、#0藤井祐眞が速攻で相手リングへ。シュートは決まらなかったが、ファウルで獲得したフリースローを2本決める。横浜・生原に3pを決められるが、ここから川崎が怒涛の攻撃を見せる。大塚が3p2本、藤井も3p2本を含む7点を稼ぐなど、オフィシャルタイムアウトを迎えるまでに48-29と川崎が一気にリード。タイムアウト後、川崎は横浜・サザランドに3pを含む5点を献上し点差を詰められるが、残り3分22秒にヒースをコートに戻してファジーカスとカルファニと3人でビッグラインナップを形成。すると、カルファニの3pから始まり、藤井から#14辻直人とボールが渡ってファジーカスがゴール下から得し、ヒースがダンクを決めた後は鮮やかにパスをつないでファジーカスが決める。前半最後は#7篠山竜青がハイポストからシュートを決めて、川崎が63-36として27点リードで前半を折り返す。

大きくリードした川崎は、後半立ち上がりからヒースのダンクでさらに加点すると、ファジーカスが6点を稼ぐなどで73-39とリードをさらに広げていく。しかし、これ以上差を広げられたくない横浜・ベクトンのダンク、竹田のジャンパー、サザランドのレイアップで追い上げ体勢を作り、直後の川崎の攻撃を24秒オーバータイムで乗り切る。しかし、川崎はファジーカスがセカンドチャンスから得点すると、熊谷にも3pが生まれ、79-51とリードをキープして最終Qへ。

4Qに入ると、川崎は控えのメンバーで構成し、ここまでのリードを生かして試合を支配。結局97-70で川崎がリーグ戦8連勝とし、対横浜の連勝を19に伸ばした。

川崎が驚異的なシュート決定率で得点を量産、攻守ともに“準備万端”で臨む

とにかく川崎の攻撃力が桁違いだった。前半の得点を確認すると、63得点で3pは13本中11本を決めてシュート決定率が84.6%、2pシュートも含めたシュート決定率は75.8%と驚異的な数字を叩きだす。3pシュートは通常3本に1本(33.3%)決めれば良いと言われている中で、84.6%は突出した数字と呼んでよいだろう。横浜も川崎にオープンの場面を数多く作ってしまい、それがほとんど得点に繋がることになった。特に2Qは38-16で、ここで差が付いた22点が結果的に最終スコアの点差に繋がった。

確かにスコアが目立つ試合となったが、川崎は驚異的な得点力の陰で、泥臭いプレーも随所に見せている。

一人目は鎌田。1Q終盤でルーズボールに喰らいつき、相手にシュートを打たせなかった場面だ。佐藤賢次HCが「流れを変えてくれた」と絶賛。個人の数字としては残らないが、まさにチームプレーだった。結局、横浜はショットクロックバイオレーションとしてしまい、川崎に攻撃権を献上することになったのだ。

もう一人はカルファニ。前半だけで3p2本を含む14得点を稼いだが、守備でも好プレーを連発する。鎌田がルーズボールで喰らいついたポゼッションの前の守備では、相手のパスコースに入り横浜の攻撃を遮断した。そして、再開後は自らスティールを決めて攻撃権を獲得すると、自らの手で3pを沈める。

カルファニは2Q出だしの場面でもスティールを決めて、藤井の速攻に繋げた。シュートは決まらなかったものの、ファウルによって獲得したフリースローを藤井が2本決める。これで流れをものにした川崎は、大塚やファジーカスを皮切りに驚異的な決定率で3pを決めていく。カルファニは試合を通してもチームトップのスティール4本を決めて、攻守に渡って勝利に貢献した。

マティアス・カルファニⒸマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

試合後、カルファニは満面の笑みで取材に答えてくれた。 「今日はシュートタッチが良くて、しっかり決める事が出来ました。それがチームの勝ちに繋がった」と開口一番コメント。

そして守備面に話題を変えると「エナジーをチームに与えようとみんなが頑張ってくれるので、ボックスアウトやヘルプをしっかりやりました。横浜はオフェンスリバウンドが強いチームだとわかっていたので、それに対して準備できていたのが結果に繋がった」と横浜の外国籍選手が変わったことも踏まえて“準備万端”だったようだ。

「チームでスティールやパスカットを狙う事に注意を払っていました。チームというのが重要ですね」とチームでやり切った結果と話すカルファニ。もう一人の外国籍選手のヒースも含め、チームが一つになっている証拠のようだ。

外国籍選手も入れ替わり、試合への “準備不足”が否めなかった横浜

川崎が横浜に圧勝したが、大きく差が出たのは2Qだけ。では、横浜はこの試合をどう感じていたのか?司令塔の生原、田渡ともに「準備不足」を敗因とする。

田渡は「2Qは見ての通り。川崎のエクスキューション能力がすごかった」とし、生原も「チームとしての若さが出た」と試合を振り返る。

横浜は外国籍選手が入れ替わり、前節の新潟戦では連勝を果たしたものの、新加入のサザランドは加入して間もない状況で水曜日を迎えていた。「準備不足だった」と話す生原に、もう少し踏み込んで話を聞いてみた。

「向こう(川崎)がどういうチームかというのを、外国籍選手も含めチーム全体でしっかり対策できていなかった。水曜ゲームの難しさは1日しか練習ができない事なので短い時間でしか準備できない」と内情を明かす。

そして、試合では事前に準備していたプランとは違う守り方になっていたようだ。

「元々3pの試投数が多いチームなので、3pを打たせないプランでした。スクリーンからの3pを打たれたのが多かったので、そこは準備不足だった」と生原は反省する。

川崎ブレイブサンダース・
藤井祐眞(左)と横浜ビー・コルセアーズ・生原秀将Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

そして、またしても敗れてしまった川崎に対してはこのような印象を持つ。

「相手は長年同じメンバーで出来ているのが大きい。ここがダメならこっちとか、長年やっているからこそわかる部分があるので、今シーズン集まったメンバーでそれを今すぐやれと言われても難しい。ただ、相手が前回の対戦からさらに強くなったのではなく、自分たちが試合に向けて準備してきたことができなかった。ただそれだけです」

生原はあくまでも自滅を強調する。

「ディフェンスができる選手をたくさん集めたチームなので、ディフェンスがストロングポイント。それがストロングポイントであるのにできなかった」と“準備不足”であることを繰り返した。

次戦のA東京戦に向けて問われると「質の高い練習をして、それをどれだけ試合に生かせるかがキーポイント」とする生原。如何に質の高い練習を積み上げられるのかが課題のようだ。外国籍選手も変わり新しいチームとして再出発した横浜。練習を通じて準備万端な状況にしなければならない。

「相手がどうこうよりは練習でやってきたことができるかできないのか、1週間かけてやってきたことができるかできないのか、それが出来たら勝てるし、できなかったら僕たちみたいなチームは勝てない」

生原にはチームの課題が明確に見えていた。あとはチームとして実践できるかが分かれ目のようだ。