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B1横浜 昨シーズンからの変化を示す“26”という数字が意味するもの

横浜ビー・コルセア―ズの円陣写真Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

プレシーズンゲーム開催 横浜 vs アーリーカップ関西王者の京都

9月21日(土)に、横浜が京都を迎えて、スカイアリーナ座間でプレシーズンゲームを行った。

横浜は、昨シーズンから選手を大幅に入れ替えて今シーズンに臨んでいたが、1週間前に出場したアーリーカップ関東では、残念ながら最下位。このプレシーズンゲームを迎えるにあたっても、アーリーカップで2試合連続2桁得点だった#42 ジェイソン・ウォッシュバーンが腰痛、さらに#32エドワード・モリスが左膝蓋骨骨挫傷、#7レジナルド・ベクトンが外国籍登録手続き中でプレシーズンゲームを欠場。インサイドを担う選手が3人も不在となるため、#14ジョルジー・ゴロマンと#81小原翼でインサイドを回さないといけない状況となった。

一方、対戦相手の京都は、アーリーカップ関西に初出場し、#12岡田優介、#9綿貫瞬を怪我で欠きながらも、決勝では2連覇している琉球を下して初優勝を果たした。勢いに乗っている中、#32ジュリアン・マブンガ、#43永吉佑也、#50デイヴィッド・サイモンといったリーグ屈指の強力インサイド陣も誇っていた。

横浜ビー・コルセア―ズのジョルジ―・ゴロマンⒸマンティー・チダ

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厳しい状態の横浜。京都にどこまで食い下がることができたのか、注目した。

【前半】横浜が出だし0-9から巻き返しに成功

出だしから京都・サイモンのジャンプシュート、#16松井啓十郎に3pを入れられるなどで0-9に。ここで、横浜は#46生原秀将を投入して、#21田渡凌とのツーガードにすると少しずつ流れを引き寄せる。互いに点の取り合いとなる中、横浜ゴロマンがチーム初得点を挙げ、生原の3p、田渡のシュートなどで巻き返す。京都も横浜のファウルから獲得したフリースローで追加点を挙げるが、#25竹田謙のカットインで逆転に成功され、17-16と横浜1点リードで1Qを終えた。

横浜ビー・コルセア―ズの生原秀将Ⓒマンティー・チダ

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2Q、京都はマブンガとサイモンをベンチに下げてオンザコート0で試合に入り、対してオンザコート1の横浜は優勢に立ちリードを広げていく。さらに竹田の3pを皮切りに、ゴロマンが相手ファウルからのフリースローを2本決めると、途中からコートに入った新加入の#22秋山皓太が3pを沈めて横浜のリードは9点となる。ここで京都は主力のマブンガを戻し、横浜の勢いを止めたいところだったが、横浜の新加入#9ホール百音アレックスがファストブレイクに成功。横浜のペースが乱れることはなかった。

その後、ゴロマンが個人ファウル2回目をコールされてベンチに下がり、横浜はオンザコート0となるが、秋山がこのQ2本目の3pを決めて11点に。終盤、京都マブンガにフローターを決められるが、38-29で横浜リードで前半を折り返した。

【後半】横浜が後半だけでチームファウル16個 京都に逆転を許す

後半、互角の入りだったが、横浜は田渡、生原が2度、竹田、#10アキ・チェンバースが個人ファウルをコールされる。早々にチームファウル5回目を受け、さらにファウルを受けたアキ、3回目である生原、竹田がベンチに下がる場面も。しかしそんな中でも横浜はゴロマンのアリウープダンク、ホールと秋山の3p、ゴロマンがスティールからファストブレイクを成功させてリードを広げていく。

ここで京都がタイムアウト。すると流れは京都のペースになっていった。京都・サイモンにフローターを含めて4得点、永吉、再びサイモンと続き、3Q終了時には京都に点差を詰められる。

横浜ビー・コルセア―ズの牧全Ⓒマンティー・チダ

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4Qに入ると、サイモンにフリースローを含め8得点を奪われ、京都に逆転を許す。しばらく点の取り合いが続き、残り5分の時点で横浜は1点差を追いかけていた。

ここでインサイドで奮闘していたゴロマンと司令塔生原が個人ファウル4回目をコールされる。

流れを変えようとゴロマンの3pで何とか喰らいつこうとするものの、京都#33内海慎吾にコーナーから3p、#6中村太地のドライブからリングに飛び込んだサイモンにダンクを叩き込まれて8点差に。その後、横浜はゾーンディフェンスを敷くが、京都・松井にコーナーから3pを沈められてリードが11点になった。

横浜#2橋本尚明が3pを沈めて意地を見せるが、直後にゴロマンがファイブファウルで退場。結局72-81で横浜は京都に敗れた。

横浜のチームファウルは26個 それが意味するもの

横浜は残念ながら京都に敗れたが、昨シーズンから変化を感じさせる試合運びを見せた。それが “26”という数字、横浜が京都との試合でコールされたチームファウルの数だった。

昨シーズンのレギュラーシーズン1試合平均ファウル数で一番多かったのが秋田の23.63回、一番少なかったのが新潟の14.55回。横浜17.06回、京都14.66回だった。2017-18シーズンでは富山が一番多くて20.63回、2016-17シーズンは京都で20.11回だった。

こうして比較すると“26”は、昨シーズンの1試合平均ファウル数最多の秋田を上回るもので、数字としてはかなり多いと言える。これがレギュラーシーズン終盤であれば“ファウルトラブルで崩れて厳しい結果”となるわけだが、まだシーズンは始まっていない。

昨シーズンの横浜はハードなディフェンスがチーム内で徹底できず、ゾーンディフェンスに頼る展開が多かったが、この日の京都戦ではファウル覚悟でアグレッシブにチャレンジをしていた。

「今回の試合はチームにとって良い挑戦だった。ビザの関係やケガで3人(ウォッシュバーン、ベクトン、モリス)が出場できない中、チームがどうなるのかという意味でも良かったと思いますし、チームとしても良い方向に向かっていると感じます」

横浜の指揮官として2シーズン目を迎えるトーマス・ウィスマンHCは試合に敗れたものの、一定の手応えを掴んでいた。そしてチームファウル“26”についてはこのように分析する。

横浜ビー・コルセア―ズのトーマス・ウィスマンHCⒸマンティー・チダ

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「昨シーズンと比べると、今シーズンの方がディフェンスでアグレッシブになっているし、その中でも若い選手はファウルの仕方とかハンドチェックのところをしっかり修正させたい。26個のチームファウルは多いですが、ビデオからどういう所でファウルをコールされたのか確認してしっかり教えていきたい。手を伸ばし過ぎて、無駄なファウルをもらいすぎたので直していきたい」

課題は明確に見えていた。アグレッシブにディフェンスする姿勢はできており、ファウル数も細かなハンドチェックを修正すれば改善できると見込んでいるようだ。

「この試合でコールされたチームファウル“26”は仕方がない」田渡凌

今シーズンからキャプテンに就任した田渡は「僕が思っていたよりも良いチームになっている。それは自信を持ってやらなければいけない」とコートに立っていた選手としても収穫の多い試合だったようだ。

横浜はハードなディフェンスに加えて、オフェンスでもリングに向かってアタックする回数が増えていた。

「あれだけ昨シーズン負けていたチームなので、やっぱりみんな変わらないといけないと考えていた。その中で特に意識していたのがディフェンスで、みんながハードにディフェンスして相手を簡単に抜かせない、抜かれてもローテーションしてみんなで助け合うという気持ちで、練習から取り組んでいました。それが少しずつ成果として出せているのかなと思います。オフェンスのアタックに関しては、僕もポイントガードとしてもっとチームの良いオフェンスを組み立てられるように意識していて、エクスキューションのレベルが少し高くなったのかなと感じます」

そして「この試合でコールされたチームファウル“26”は仕方がない」と田渡は振り返る。

「実際の試合になれば、激しくトラップに行かなくても、ウォッシュバーンやベクトンがマンツーマンで守れるので、ファウルは少なくなってくると思う」

この試合で欠場していた外国籍選手の2人が戻ってくれば、チームファウル数も減っていくと田渡は考えている。

横浜は、アーリーカップ関東で優勝した宇都宮に6点差で敗れているが、当時は外国籍選手一人(ウォッシュバーン)で戦っていた。

横浜ビー・コルセア―ズの田渡凌Ⓒマンティー・チダ

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「最後の小さなミスが無ければ、もしかしたらというのがあった。昨年のアーリーカップでは千葉に59点差(55-114)で負けているので、それに比べたら悪くないと思う。すごく楽しみだし、だからこそ良いチームにしたい。良い練習をして一日一日大切にしていきたい」

田渡の想いが現実となるのか?それはビーコルの試合を見ていればわかることだろう。

「緊張して何もできないとはもったいない」秋山皓太

若手の中でも、戦力として見込まれる選手が現れた。アーリーカップまで出場機会に恵まれなかった秋山皓太が、15得点をあげてチームへのアピールに成功した。

アーリーカップでは、2試合合計でプレータイム5分も満たなかったが、プレシーズンゲームでは13分37秒のプレータイムで3p3本を含む15得点を記録する。

「多分名前も知られていなくて、オープンシュートが多かったので普通ですね」

この日の手応えを質問されての答えだ。秋山は今年3月に東海大学を卒業したルーキーで、大学バスケのシーズンが終わった後は、特別指定選手として金沢に在籍し12試合に出場していた。

東海大時代は主にベンチから出場する機会が多く、4年生の時はシーズン途中からシックスマンとして、先発に起用された1年生のサポート役に徹して関東大学リーグ戦や全日本大学バスケットボール選手権の優勝に貢献した。

「東海大の時は今と同じような感じですが、試合当日までの準備期間でどれぐらい出られるのかわからない中、毎日きちんと準備できるのかというのを1年間しっかりやってきたのが、プロの生活に入って少し生かされているのかなと思います。試合に出てどうというのはわからないのですが、合宿とかでも気持ちがぶれずにきちんとやれていることは良いことで、大学時代の経験が生きたのかなと思います」

秋山は大学時代の経験から、気持ちのぶれを最小限にして試合に臨んでいた。「気負いはしないですね。少し緊張はしましたが、緊張して何もできないとはもったいない」そう考えていた秋山は、2Qでコートに入って最初に決めた3pで「あれで楽になりました。かなり落ち着きました」と当時の心境を語る。

2本目以降も、シュートの軌道は「いつも通り」だったと話す。

「実戦でコンスタントに決めていかないと、チームメイトから信頼は得られていないと思うので、これを継続できれば『秋山、このタイミングでパスを出す』とか出来るはずなので」

一方のディフェンスにおいては、課題が多いようだった。

「ウィスマンHCからも、ディフェンスに関してはかなり意識させられている。間合いやコンタクトの仕方、ただのコンタクトでは無くて当て方や体の寄せ方とかまだ全然できていなくて、練習中結構注意を受けたり、アドバイスをもらったりしています」

「ディフェンスがきちんとできないとプレータイムはもらえないし、プロなので多少なりともプレータイムは確保しないといけない。一つずつクリアしていきたい」

秋山はプロ意識を持ち合わせながら、目の前の課題に対して取り組んでいた。秋山がルーキーながら横浜の顔に成長した時、チームも成長を実感できるだろう。シーズンが終わった時に秋山がどんな顔つきになっているのかも注目したい。

横浜ビー・コルセア―ズのⒸマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


横浜は、アーリーカップも含めてここまで勝利に恵まれていないが、昨シーズンから着実に変化が見られる。アグレッシブなディフェンスをした結果、チームファウル“26”を数える事になった。そして、若手からもチームの顔になりつうある選手が出てきた。チャレンジしたからこそ、次へのステップが見えてくる。その中で新たな顔になる選手も出てくれば、チームとしても成長が期待できる。開幕までの課題を克服すれば、更なる高みも期待できるだろう。

田渡も「良い練習をして一日一日大切にしていきたい」と誓った。ぜひ“残留プレーオフ”ではなく、チャンピオンシップ出場を期待しよう。