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Bリーグアーリーカップ関西から見えてきた出場チームのキーマンたち

2019 9/24 06:00カワサキマサシ
Bリーグアーリーカップ関西で優勝した京都阪奈リーズの選手ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)
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ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

京都が琉球下し優勝

「Bリーグアーリーカップ関西」が9月14日から16日にかけて、おおきにアリーナ舞洲で開催された。大会はトーナメント形式で争われ、1回戦ではB2のバンビシャス奈良が、B1の滋賀レイクスターズを102-80で破る波乱もあった。

決勝戦では今大会を2連覇中の琉球ゴールデンキングスと、今回が初出場となる京都ハンナリーズが対戦。試合は中盤まで一進一退の攻防が続いたが、じわじわと京都が点差を広げていく。ついには第3Q残り5分38秒で琉球の外国籍選手デモン・ブルックスが5ファールで退場し、流れは一気に京都へ。

琉球はもうひとりの外国籍選手ジョシュ・スコットが、負傷明けで出場時間を制限していたこともあり、劣勢を跳ね返せない。第3Qで27得点をあげた京都が逃げ切り、73-61で初優勝を飾った。

大会の最終順位は以下の通り。

優勝:京都ハンナリーズ
準優勝:琉球ゴールデンキングス
3位:大阪エヴェッサ
4位:バンビシャス奈良
5・6位:西宮ストークス、滋賀レイクスターズ

「アーリーカップ」は、Bリーグの新シーズンを占う大会とも位置付けられる。今年の大会から見えてきた、各チームの注目選手を紹介していこう。

京都は新人大型PG中村に期待

今季の京都には3選手が新加入した。注目は、現役法政大生で身長190cmの大型ポイントガード(PG)中村太地。大学のバスケットボール部を退部し、京都でプロとしてプレーする道を選んだ。彼への期待を、浜口炎ヘッドコーチ(HC)はこう口にする。

「彼の良いところはメンタルが強く、ハードワーカーであること。ルーキーなので課題は多くありますが、そのなかでもPGなので、ターンオーバーなどのミスを少なくして、ゲームをコントロールすること。シュートよりも、アシストを意識してやってほしい。やがては代表に入る選手になってくれると、期待しています」

京都ハンナリーズの中村太地ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

今大会の中村は準決勝で1得点10アシスト、決勝では8得点3アシスト。昨季のアシスト王は同じ京都のジュリアン・マブンガで、1試合平均8.5をマークした。

マブンガはアウトサイドからもインサイドからも得点ができ、ゲームメイクもできるマルチプレーヤー。中村が司令塔役を果たせればマブンガの負担が減り、より得点に注力できる。

そうなれば昨季は1試合平均77.4得点で、18チーム中9位だった京都の得点力がアップし、一昨季以来のプレーオフ進出の可能性が高まる。

琉球は岸本&並里のPGコンビが健在

昨季の西地区優勝の原動力となったのは、岸本隆一と並里成のPGコンビ。守備ではふたりが前線から激しく相手を追い、攻撃に転じてはそれぞれに特徴が異なるプレーで多彩にゲームメイクを施す。

岸本と並里はbjリーグ時代の2012-13シーズンから3季にわたってともに琉球でプレーしていたが、その後に並里が滋賀に移籍。2季ぶりの昨季に復帰していた。

チームの要になる自分たちのプレーを岸本が語る。

「僕の感覚では、(並里とのコンビプレーは)まだまだですね。自分のプレーで彼の良さをもっと引き出せると思っていますし、彼のプレーで僕の良さも、もっと出せていけると思う。僕らのプレーがもっと上手く機能していけば、イニシアティヴをとれるいちばんの武器になるとも感じている。もっともっと、良いものを積み重ねていきたいです」

琉球ゴールデンキングスの岸本隆一(左)と並里成ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

今大会の2試合の合計で、岸本は3Pシュートを7本成功させるなどで28得点。並里は5本の2Pシュート成功に、チーム最多の8アシストで琉球の攻撃に貢献した。ふたりの連係がより高まれば、他チームにとってはさらなる驚異となるだろう。

大阪の走るバスケを新加入の伊藤が体現

大阪は“走るバスケ”を掲げる天日謙作HCが、9シーズンぶりに復帰。走って速い展開を作ることで攻撃回数が増え、今大会ではともにB2クラブであるが1回戦の西宮戦で102得点、3位決定戦の奈良戦で95得点とハイスコアをマーク。準決勝の京都戦は第4Qに8得点と失速して総得点は77にとどまったが、第1Qは30、第3Qは23と高得点をあげた。

今季の大阪のキーマンのひとりは、京都からの移籍で新加入した伊藤達哉。スピードが武器のPGはこの大会で走るバスケを体現し、文字通りチームを牽引した。初めて体験する天日スタイルのバスケを、伊藤はこう表現する。

「やはり、まず第一に走る。トランジション・オフェンスを第一に心掛けていますね。それが上手くいっているときは、京都戦の第1Qのような結果になる。逆に相手のペースに飲まれたときは、動きが止まってしまう時間帯が続いていました。PGとして、そこを上手くコントロールしたい」

大阪エヴェッサの伊藤達哉ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

今大会では3位に終わった大阪だが、1試合平均91.3得点は参加6チームで唯一の90点台越え。シーズンに入っても走るバスケが機能すれば、昨季はリーグ最下位の1試合平均68.6得点に終わった得点力が大幅に改善され、そこが今季のチームの強みになるはずだ。

ベテラン司令塔・横江が奈良の新スタイル牽引

奈良は初日の第2試合で格上のB1クラブ、滋賀を破るアップセットで大会を沸かせた。滋賀戦ではアップテンポな攻撃を仕掛けて102得点をあげるなど、大会を通じては今季から就任したクリストファー・トーマスHCが目指す、速い展開のバスケがチームに浸透しつつあることが見て取れた。

昨季の奈良はPGが試合のペースをコントロールし、得点源である外国人ビッグマンが相手ゴール付近に上がってきてから攻撃を組み立てる形だったのと比べると、今季はスタイルが一変した。スタイルの変化をもっとも表したのが、ベテランPGの横江豊。相手のシュートが決まって攻撃に転じると、ひとりでコートを駆け上がって7秒で得点を決めるシーンを幾度も見せた。今季のチームへの手応えを、横江が話す。

「試合のテンポを速くすれば、チームの流れが良くなることがわかりましたし、自分のプレーもスムーズにいく。アップテンポでやるほうが、チームに向いている。それがこの大会で感じ取れたので、良かったです。僕自身が速い展開で試合を作っていくことにもう少しアジャストして、チーム全体で共通認識を高めていけば、もっともっとよくなる手応えがあります」

バンビシャス奈良の横江豊ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

奈良は3試合ともB1勢との対戦となったが、今大会の1試合平均得点は80.3を記録した。昨季は得点力不足に悩まされ、1試合平均71.8はリーグ最下位。しかし今季は、80点台を越えるゲームをいくつも作れる気配が漂う。昨季はB2西地区4位に沈んだが、今季は台風の目になる可能性を秘めている。

西宮は走れるセンター土屋の覚醒に期待

今大会は初日の第1試合に登場し、大阪を相手に自分たちのリズムを作れず102-63で敗戦。ディフェンスのローテーションなど、とくに守備面で課題を残す結果になった。しかし後半に入って第3Qは30得点をマークと、新任のマティアス・フィッシャーHCが求める速いバスケを体現できる場面もあった。

今季を戦うにあたって注目したいのは、地元出身の生え抜き選手。大学時代に特別指定選手としてプレーした期間を含め、西宮在籍4シーズン目になる土屋アリスター時生だ。

西宮ストークスの土屋アリスター時生ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

長身ながら走力があり、走れるセンターとして期待を集める。昨季はシーズン序盤こそスターターで起用される試合もあったが、終盤は9試合連続でプレー機会が得られないなど、満足のいく結果を残せずに終わった。

198cmはチームの日本人選手では最長身。彼が本格化すれば、チームの戦いの幅が広がることは間違いない。24歳と若い土屋の飛躍が、待たれるところだ。

滋賀には日本代表のアヴィが加入

滋賀は大会初日にB2の奈良に敗れ、見せ場なく大会を去ってしまった。奈良に15本中11本の3P成功を許してしまうなど、守備面に課題があることは明らか。外国籍選手や日本代表に参加していたシェーファーアヴィ幸樹の合流が遅れ、全員で満足な練習ができなかったことは事実だが、ショーン・デニスHCは「それは、言い訳にならない」と潔い。開幕までにいかに準備を整えるか、デニスHCの手腕が試される。

滋賀レイクスターズのシェーファーアヴィ幸樹ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

ⒸSPAIA(撮影:カワサキマサシ)

アヴィは、今季の滋賀の注目選手。先に行われたワールドカップにも出場し、滋賀には来年6月末までの期限付き移籍で加わった。205cmのセンタープレーヤーで、ゴール近くだけでなくミドルレンジからのシュートもある。21歳の若いエナジーをチームに注ぎ込むと同時に、代表に選ばれるほどの能力を発揮することが期待される。

タイトル戦ではなくお祭り的大会への変更がベター?

アーリーカップ関西は今回が3回目の開催。観客数は公式に発表されていないが、主催関係者によると昨年と比べて10%ほど増加しているとのこと。この数字はBリーグのリーグ戦の観客数の増加傾向と同じなので、悪くはない。

Bリーグにはこの大会を、天皇杯とチャンピオンシップに次ぐタイトル戦としていきたい意向がある。しかし開催がシーズン開幕前で、野球でたとえればオープン戦の位置付けにあり、緊張感に欠けることは否めない。実際にHC、選手らもこの大会の試合を「練習試合」と口にする。

タイトル戦として捉えるなら、現状のアーリーカップは存在意義を見出しにくい。ならば第3のタイトル戦であることにこだわらず、たとえば近づく開幕を盛り上げるお祭り的な色合いを濃くするなど、別の形でアーリーカップを魅力あるものにする方向性を探ってみても良いのではないだろうか。