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【Bリーグ】富山躍進の要因は“タイムシェア” 京都は外国籍選手の負担増がCS逃した原因か

2019 5/30 07:00SPAIA編集部
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宇都の負担軽減はこの2年間の課題

今季、チャンピオンシップ出場を果たした富山グラウジーズ。bjリーグでは時間をかけながら力を付け成長していったが、Bリーグが始まってからの2年間は負けが先行するドアマットクラブだった。

初年度は残留プレーオフ2回戦で、横浜ビー・コルセアーズに勝利し辛くも残留。昨季はB1・B2入替戦で熊本ヴォルターズに競り勝ち、何とかB1で戦うことになっていた。薄氷を踏むような苦戦を強いられた2年間の原因は、主力選手に大きな負担をかけていたことといえる。

2年前は、苦しい台所事情ながらも日本人選手をシェアして戦っていた。ところが昨季は、#11宇都直輝の平均出場時間が34.5分でリーグ1位、#24大塚裕土が30.8分で2位という結果になるほど、この2人に頼り切った試合が多かった。

シーズン平均で17得点、7.7アシストという素晴らしい成績を残した宇都が、10得点、5アシスト以下に終わった試合は9勝15敗、勝率が3割7分5厘。11得点、6アシスト以上で終わった試合は7勝2敗、勝率が7割8分5厘だった。

つまり、ほとんどの勝敗は宇都の活躍次第で決まっていると考えられ、彼にかかる負担がいかに大きかったかが分かる。コートに立つ時間が長い分、ターンオーバーも3.2本とダントツに多く、試合中に宇都自身のパフォーマンスの質が落ちるというようなことも度々あった。

HCの手腕で負担軽減。控え選手の活躍も光った今季

再起を期した今季、指揮官に就任したドナルド・ベックヘッドコーチは、宇都がトヨタ自動車(現アルバルク東京)に入団した当時のヘッドコーチで、トヨタ(女子トヨタも含む)では“タイムシェア”を駆使して好成績を残してきた。

10人前後の選手をほぼ均等に起用し、試合の終盤にはその日調子の良かった選手をコートに送り込む。余力を残した状態で4Qまで戦うことができ、安定感のある試合展開が可能だ。

富山でもそのスタイルを落とし込むため、まずは戦力補強に着手。宇都の控えに千葉ジェッツから#7阿部友和、大塚の負担を軽減するために名古屋ダイヤモンドドルフィンズから#6船生誠也を呼び、インサイドにベテランを加えることで主力の脇を固める補強をした。

その結果、シーズン中盤に大型連敗を喫したものの、序盤の貯金と終盤の底力で32勝28敗と勝ち越しに成功。チャンピオンシップ初戦で敗れはしたが、過去2年間、残留プレーオフに回っていたことを考えれば、充実したシーズンだったといえる。

インサイドに、#34ジョシュア・スミスという確実に点が取れるセンターを据えたことで、チームのFG%が43.9%から48.8%に大きく飛躍。試投数や3P成功数を減らしながらも、77.4から83.7に得点をアップできたことは、シュートの精度が上がったことに他ならない。

その過程で変化した興味深い数字がアシスト数だ。昨季は、チーム平均19.6本のうち7.7本と、実に約4割が宇都から生まれたものだった。一方、今季は19.4本のうち宇都の平均アシスト数が4.8本と、2割5分まで減少している。

この数字から宇都の負担が軽減されたこと、また選手がボールをシェアしながら得点を生んでいたことが分かる。現に今季の宇都の出場時間は26分で昨季より8.5分減、得点も6.7減と軒並み数字を下げている。

チームが目指していた宇都に頼りすぎずに勝利するという理想の形で32勝を積み上げたのだ。

主力の負担が増加しCS出場を逃した京都

タイムシェアに成功した富山の比較対象として、京都ハンナリーズの今季の戦いを振り返りたい。

今季シーズン前に選手の不祥事が続いた京都は、補強に失敗。主に外国籍選手が担うインサイドは、シーズンを通して特に厳しい状態が続いた。さらに主力選手が相次ぐケガで戦線離脱し、外国籍選手への負担増に拍車をかけた。

外国籍選手である#32ジュリアン・マブンガの平均出場時間は38.3分、#50デイヴィッド・サイモンは37.3分と、当然ながらリーグ1、2位の数字。マブンガに関しては、ダブルオーバータイムのフル出場(50分)を含め、40分以上出場した試合が20と出場試合の半数がフル出場だった。

ともに素晴らしい成績を残した両選手だが、昨季の富山と同様2人にかかる負担は非常に大きかった。マブンガはアシストもできるため、得点が少なくとも勝利した試合は多かったが、スコアラーのサイモンが20点以下の試合は4勝10敗と大きく負け越した。また、4Qをビハインドで迎えた場合のチーム成績が4勝25敗ということからも、4Qまで戦い抜く力がなかったことが読み取れる。

両選手がシーズンを通して大きなケガもせず戦えたことで、最後までCS出場争いができた。もしも大きなケガをしていたら、チームは崩壊し残留プレーオフに回っていた可能性もあっただろう。

現時点でマブンガとサイモンが残留するか否かは未定だが、京都がCS出場するためには、外国籍選手を支える日本人選手の存在が不可欠といえる。