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【Wリーグ】ルーキー若原らの活躍で山梨QBが東京羽田に白星

2019 10/11 06:00マンティー・チダ
山梨クィーンビーンズⒸマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

開幕戦は山梨QBが勝利 アジアカップMVP本橋を擁する東京羽田に隙を与えず

2019-20シーズンWリーグの開幕戦は、東京羽田と山梨QB。この試合はFIBAアジアカップ2019で日本代表の4連覇に貢献し、大会MVPを獲得した東京羽田・本橋の凱旋試合となった。しかし、山梨QBがそんなお祝いムードを打ち崩した。

昨シーズンの山梨QBは2勝20敗。今シーズンから伊與田好彦HCが就任し、目指すプレースタイルとして、“低く・強く・速くプレーできる”、“誰かに頼るのではなくチームで攻防を行えるチームを目指す”をメインに掲げている。東京羽田ボールからスタートした試合において、2-3ゾーンディフェンスで奇襲をかけて、それが功を奏して勢いに乗って勝利することができたのだ。まさに“低く・強く・速く”を出だしからやった結果だった。

開幕戦では開始早々、山梨QBは2-3ゾーンディフェンスで東京羽田に立ちはだかる。試合は互角に進むが、徐々に山梨QBのゾーンディフェンスが圧力を増していく。残り6分57秒、東京羽田が司令塔#12本橋菜子をベンチに下げたのを見計らって、山梨QBはフロントコートからのプレスディフェンスに切り替える。東京羽田がアウトサイドからシュートを放つが得点には繋がらず、反して、山梨QBは#74水野菜穂がバスケットカウントを成功させて3点を追加するなど、一気に突き放していく。

その後も強度をあげたディフェンスで勝負する山梨QB。ファウルの回数を重ねるも強度を落とさない。東京羽田#20鷹のはし公歌に3pを含めた5点を許して同点に持ち込まれるシーンもあったが、ディフェンスの激しさは一定していた。そんな中、ルーキーの#13若原愛美がスティールからファストブレイクでリードし、東京羽田も鷹のはしの3pで追走する。山梨QBが抜け出して東京羽田が追いつくという展開が続いていくが、最終的に山梨QBが1点リードで終了した。

2Qに入ると、1Qの終盤からコートに戻っていた東京羽田・本橋に速攻から得点を許す。以降しばらくは両チームとも激しいディフェンスで膠着状態となっていたが、本橋のアシストから試合が動く。東京羽田のルーキー#21尾﨑早弥子に勝ち越しとなる得点を許すと、続いて#6星澤真が2本のシュートを決めて東京羽田にリードを広げられる。猛追を何とか踏ん張っていた山梨QB。前半最後は若原の3pなどで34-32で終了した。

山梨・水野菜穂Ⓒマンティー・チダ

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後半に入ると、前半の立ち上がりと同じように山梨QBが激しくディフェンスを強固に戦っていく。セカンドチャンスから若原が口火を切ると、水野のレイアップ、#23横井美沙の3pを含む5得点などで逆転に成功。東京羽田に3点リードする。東京羽田・本橋も積極的に得点へ絡むものの、両チーム共に決め手を欠いてスコアが3点差から動かなかった。終盤になって、山梨QB #47内堀紫菜のシュートでリードを6点にして4Qへ。

4Q。依然として山梨QBの激しさは変わらない。#18岡萌乃と水野の得点で山梨QBはリードを8点まで広げる。東京羽田はファウルを重ねながらも、これ以上山梨QBから離されないように食い下がるが、山梨QB・星田が東京羽田のファウルから獲得したフリースローを決めて、点差を広げていく。

取りこぼしが許せない状況の東京羽田が星澤の得点を皮切りに、鷹のはしの3p、本橋のバスケットカウントも決まり7点差まで追い上げ、ここから一気に逆転としたかった東京羽田。対して、山梨QBは残り4分33秒のタイムアウト以降で粘り腰を見せて、東京羽田に付け入れる隙を与えなかった。結局終わってみれば73-61で山梨QBが東京羽田に勝利。開幕戦を白星で飾った。

今シーズンから加入の山梨QB・若原愛美が勝利に貢献

山梨QBはルーキーとして4選手が加入した。その中でも東京医療保健大学で今春まで主将を担っていた若原愛美が、Wリーグ初出場ながら13得点をあげて、持ち味である泥臭いプレーにも磨きがかかっていた。

「“積極的に”というよりは、いつも通り今までやってきたことをやれば勝てる。いつも通りにやることを意識していました」

若原が話す通り、ここまで練習を相当量積んできた山梨QBが、練習と同じように試合へ臨んでいた。いつも通りに“低く・強く・速く”をやったに過ぎなかった。

「ゾーンディフェンスもフロントコートからのプレスディフェンスも秘策。ディフェンスで先手を取るという判断は良かった。リバウンドを取られたことは反省です」

そして、東京羽田・本橋に対しては一人ではなく二人で常にマークしており、その成果を強調していた。

「MVPを獲得されたのですごいなと思いますが、バスケットはチームスポーツなので、一人でやるのではなくチームでどれだけ一丸となってやれるかが勝負だと思う。そこを体現できたのは良かった」

若原は、今年の春に東京医療保健大学を卒業したルーキーで、4年生の時はキャプテンを務めていた。

「周りに得点できる選手が多かったので、泥臭いところ、記録に残らない部分で頑張ってきた」

そう、ボールを持っていない時のアグレッシブさはすごいものがあった。しかし、山梨QBへ入団すると、みんなで得点しないといけない状況に身を置くことになる。

「ここではみんなが得点を取らないと勝てないので。大学を卒業してから6か月間はシューティングを主にやってきました」

若原は大学卒業後、得点についても意識を持ち始める。

「リングに対する意識づけもかなり練習しましたし、大学の時よりも常に自分が点をとるという意識になりました」

チームのサブキャプテンを務める水野菜穂は、若原と同じく東京医療保健大学OGで「心強いですね(笑)。気持ちの面でも、新人ながらお手本になる選手です」と語る。大学時代の後輩が加入したことで、チームも活性化してきたようだ。

後半からの逆転劇は、「昨シーズンは後半から崩れてしまう事があったので、もう1回0対0だと思ってスタートからやろうとチームで共有していました」と、昨シーズンの反省も踏まえ新人の力を借りながら戦った結果だったという。

最後に若原は今後に向けてコメントした。

山梨・若原愛美Ⓒマンティー・チダ

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「私たちの目標はプレーオフに行くこと。1勝できたことは非常に大きい。その価値を弾みにしたい。明日も来週もチームで戦っていきたい」

残念ながら翌日の試合では東京羽田に敗れたが、昨シーズンまで1勝するのがやっとだったチームが、開幕戦から勝利した結果が付いてきたのは大きい。そして、若原はシーズンを通してチームで戦うことを強調した。“低く・強く・速く”をモットーにシーズンを過ごすこれからの山梨QBから目が離せない。