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バスケ男子日本代表がW杯に向けて始動「ヨーロッパ勢に勝利することが大きな挑戦」

バスケ男子日本代表フリオ・ラマスヘッドコーチⒸマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

ワールドカップ本戦に向けて活動開始

ワールドカップ本戦開催まであと1か月余り。男子日本代表は、バスケットボールワールドカップアジア2次予選で、開幕4連敗から8連勝して出場権を獲得し、東京オリンピックに次ぐ大きな国際大会に向けて始動している。

ワールドカップ本戦1次ラウンドでの予選グループは、トルコ、チェコ、アメリカ。グループで2位以上に入れば、2次ラウンドに進むことができる。

現実的に考えると、アメリカの1位通過が有力視され、日本を含めた残りの3チームで2位争いをすることになる。しかし男子日本代表は、世界的な大会に出場した経験が少ないことが懸念されており、世界大会で勝利したのは5チーム(パラグアイ、パナマ、プエルトリコ、ペルー、セネガル)のみ。今大会で同グループであるヨーロッパ勢には国際大会で勝利したことはない。つまり、トルコ、チェコといったヨーロッパ勢から初勝利をすることが、1次ラウンド突破に向けて必須事項になる。

「だからこそ、今までよりもっと厳しい練習をこなさないといけない。もっと良いプレーをしないといけない」

日本代表フリオ・ラマスHCの語気が強まるのも無理はない。

なお、先日までチャイニーズ・タイペイで行われた『ウィリアム・ジョーンズカップ』では、若手中心のBチーム編成で出場し9年ぶりの銅メダルを獲得して結果は残したが、ワールドカップに出場するフィリピンと韓国には敗れている。ヨーロッパ勢はもちろんだが、その先に待ち構えている相手国のレベルは一気に上がる。これからさらに世界との厳しい戦いが始まるのだ。

「ヨーロッパ勢に勝利することが大きな挑戦」フリオ・ラマスHC

ワールドカップ本戦では、アジア地区2次予選に出場できなかった、八村塁(ウィザーズ)、渡邊雄太(グリズリーズ)、ファジーカス・ニック(川崎)が初めてそろい踏みする。日本代表史上最強メンバーで臨むと思われたが、記者会見直前に残念なニュースが飛び込んできた。司令塔の富樫勇樹(千葉)が、合宿の練習中に右手薬指骨折で戦線離脱。ワールドカップ本大会への出場が厳しくなってしまったのだ。

「我々にとっても悲しいニュースで、チームにとっても痛手」

ラマスHCは、会見でこのように心境を述べた。富樫は、Bリーグで日本人初の1億円プレーヤーとなり、檜舞台でスピード感あふれるハンドリングから日本を引っ張るはずだった。

だが、悲観する必要はないだろう。現在の日本代表では、八村や渡邊ら世界で活躍できる選手たちが揃ってきている。さらに、富樫の抜けたポイントガードに目を向けると、キャプテンの篠山竜青(川崎)を始め、予選でも一時的に役割をこなしていた田中大貴(A東京)や比江島慎(栃木)が控えている。実際、アジア地区2次予選カタール戦でも、富樫が2Qで足を負傷してベンチに下がったが、その後、篠山、比江島、田中らがしっかり穴を埋め、前半のビハインドから逆転勝利した。

「富樫の怪我関係なく、田中や比江島のポイントガードとしての起用は、前から考えていたこと」

そう語ったラマスHC。2次予選とはいえ、もう試合としても経験は済んでいるので、あとは精度をあげることが大事になる。

「自分のためにプレーするのではなく、チームのためにプレーしろ。練習に参加するときは100%、本番では気持ちで戦い抜いてほしい」

これは、ラマスHCが記者会見においてメディアから八村のチームにおける役割について問われたときに、「八村に限った話ではない」として答えた内容である。バスケットボールは個人でできるスポーツではなく、チームスポーツだ。「チームのためにプレーできることが、いかにできるかが大事になる」ということは日頃から選手に伝えていた。

その八村と、渡邊は30日から名古屋で合流し、8月1日から全員が揃って合宿を始める。

「ヨーロッパ勢に勝利することが大きな挑戦」

まずはヨーロッパ勢から勝利をもぎ取り、旋風を巻き起こすところからスタートのようだ。

比江島慎と馬場雄大がサマーリーグの経験を引っ提げ日本代表を牽引

八村や渡邊とともに、NBAサマーリーグに出場していた、比江島と馬場雄大。

「サマーリーグに参加して、成長できた部分もあり、ここまで良い調子で来ている」(比江島)

「サマーリーグ最後の試合で負傷した右肩がまだ完治していなくて、別メニューで調整しているが、感覚は覚えているので、代表に合流したモチベーションからお互い刺激になれば」(馬場)

2人とも、この夏で得た成果を胸に、代表に合流していた。

「アメリカと試合をする前に、アメリカ人やアメリカのバスケットを経験したことは大きかった」

比江島はサマーリーグでの成果を強調していた。

「リングへのアタックは、アメリカでも通用すると感じた」

一方の馬場は、自らの持ち味で結果を残せたことに手ごたえがあったことを語った。

ラマスHCは、NBAサマーリーグでプレーした2人について次のように見ている。

「馬場に関しては、今回目立ったプレーができたと思う。アスレチックな能力については、今回の挑戦で成果を出せたのかな。こういった選手は、NBAではゴロゴロいますから。その中でも良くできただろう。比江島は、活躍というほど成果は出せなかった。しかし、今回間近で世界を感じられた経験は無駄ではない。今後生かせるだろう」

ラマスHCとしては、2人のさらなる進化に期待したいところだろう。

Ⓒマンティー・チダ

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2人はサマーリーグ終了後、八村や渡邊と食事をし、その時の状況を馬場は語った。

「マコさん(比江島)はただ聞いていただけですけど、代表のことで話をした。若者たちが話を膨らませていたというのはある。和気あいあいに話せた」

比江島はワールドカップ後、Bリーグ(宇都宮ブレックス)でプレーすることを公表したが、馬場は、海外でプレーしたい希望を明かす。

「サマーリーグを経験して、あそこまでワクワクした瞬間は、バスケではこれまで無かったので魅力を感じている。この先どうなるかわからないが、向こう(アメリカ)でやることをビジョンにおいて考えている」

ワールドカップで、日本代表が世界中のバスケファンにその名を轟かせたとき、才能ある選手たちが、海を渡って海外に目線を向けることが増えるようになれば、国内外のバスケ熱も大きく発展するだろう。