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元広島ソリアーノは有資格者リストから外れる…殿堂入りジーターと明暗

2020 1/23 06:00楊枝秀基
落選したソリアーノⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ジーターとウォーカーが殿堂入り

全米野球記者協会(BBWAA)による米国野球殿堂入りメンバーの投票結果が21日(日本時間22日)発表された。元ヤンキースで主将を務めた遊撃手のデレク・ジーター氏(45)が、有資格1年目で殿堂入りした。

ジーター氏は投票で全397票のうち396票を獲得し、得票率は99.7%。満票に1票だけ足りなかった。昨年、史上初の満票で殿堂入りした元ヤンキースの守護神マリアノ・リベラ氏に続く有資格1年目で2年連続の満票とはならなかったものの、名門ヤンキースで20年間プレーし、ワールドシリーズ制覇5度、通算3465安打、260本塁打、打率3割1分の成績で文句のない殿堂入りだった。

また、ロッキーズなどで活躍したラリー・ウォーカー氏(53)は得票率76.6%で、有資格最終年で殿堂入りを果たした。

米野球殿堂入りは、10年以上連続でメジャー取材をする米国野球記者協会(BBWAA)に所属する記者が投票権を持ち、全投票数の75%以上を獲得した候補者が殿堂入りとなる。5%以上の得票があれば、10年間は候補として資格を有することになるが、得票数が全投票数の5%に満たなかった候補者は翌年からリストを外れることになる。

シリング、ボンズ、クレメンスも落選

今回、新たにノミネートされたのは殿堂入りした2人を含め18人。選出されることのなかった選手の中には、ダイヤモンドバックスなどで通算216勝のカート・シリング氏(278票、得票率70.0%)もいた。薬物使用疑惑が影を落とす、メジャー最多通算762本塁打のバリー・ボンズ氏(241票、60.7%)、サイ・ヤング賞を歴代最多7度、通算354勝のロジャー・クレメンス氏(242票、61.0%)も選出されなかった。

その中で密かに日本でも注目を集めていたのは、NPBの広島でも活躍したアルフォンソ・ソリアーノ氏(44)だ。米国現地の報道でも「面白かった選手。素晴らしいキャリアを送った選手」ということで、ソリアーノ氏は紹介されている。

ドミニカのカープアカデミー出身の同氏は1996年から広島で2年間プレー。1998年にNPBで9試合に出場し2安打を記録している。若さあふれる強引なフルスイングを覚えている鯉党も少なくないはずだ。

メジャー通算412本塁打、2095安打もわずか6票…

ソリアーノ氏はその後、年俸調停を申し立てるなどし、任意引退選手として広島を退団。1999年にヤンキースと契約するに至った。その年の9月にはメジャーデビューし、そこからMLB通算16年で412本塁打、2095安打、289盗塁、打率.270の成績。日本球界から逆輸入選手として海を渡ったとき、この活躍を予想できた人が何人いたことだろう。

盗塁王1回、球宴7回、球宴MVP1、シルバースラッガー賞には4度選出。メジャー史上4人しかいない40本塁打、40盗塁も記録している。メジャーファンからも記憶に残る選手として人気だった。だが、印象としてはスマートな選手ではなかった。華麗な守備や芸術的な打撃で魅せるというわけではない。野生的な勘で、初球からフルスイングしていく無骨で楽しいプレースタイルだった。

メジャー時代、チームメートだった米球界関係者はこう語る。

「最初はバカにされることもありましたよ。『何も考えてない。メジャーで通用するはずがない。日本でも大したことなかったんだろ』とね。いろんな声がある中で彼はプレースタイルを貫いた。自由に思い切り振り回し続けた。爽快でかっこいいと思いますよ。名門のヤンキースでね。逆に日本の野球では開花できなかったかもしれないですね。野球殿堂は入ってほしいけど、なんか、アルフォンソらしくないんじゃないかなんて思ってしまいますね」

実際、米国メディアの予想でも野球殿堂入りに選出される可能性は低いと予想されていた。そして蓋を開けてみると6票で得票率1.5%。現実的ではないと思われていた殿堂入りとはいえ、規定により翌年から殿堂入り資格者から外れるという結果は残念でならない。