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PS初の3失点以上、田中将大はなぜ打たれたのか【ALCS 第4戦】

2019 10/19 06:00棗和貴
第4戦敗戦投手となったヤンキース・田中将大Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ヤンキースにとって痛すぎる敗戦

ヤンキースにとって、あまりにも大きな敗戦だった。ア・リーグ優勝決定シリーズの第4戦、アストロズとホームで対戦したヤンキースは8対3で完敗。アストロズはワールドシリーズ進出に王手をかけた。強打を誇るヤンキース打線は得点圏で7打数0安打、残塁数は10に上る。守備も精彩を欠き4失策。ポストシーズンにおいて1試合に4失策以上を記録したのは1976年以来のこと。

悲しい出来事もあった。2019年をもって引退する251勝投手、CCサバシアの負傷交代だ。8回表、アストロズのジョージ・スプリンガーの打席途中で、CCサバシアが異変を訴えた。ベンチに下がるCCサバシアにヤンキースファンはスタンディングオベーションを送ったが、130キロを超えるその巨体の背中は小さく見えた。おそらく、これがCCサバシアにとって現役最後の登板となるだろう。

そして何よりヤンキースにとってショッキングなのは、この日まで防御率1.32という抜群の安定感を誇っていた田中将大が打たれたことだ。3回表、田中はジョージ・スプリンガーに逆転の3ランホームランを許す。地元記者によると、このホームランは田中にとってポストシーズン4本目の被本塁打だったが、ランナーを置いた場面で打たれたのは初とのこと。6回にも1点を失った田中は、5回0/3を投げて4失点。ポストシーズンで田中が3点以上失ったのも初めてのことだった。

田中将大はなぜ打たれたのか

これまでポストシーズンにおいて絶対的な強さを誇っていた田中将大は、今回なぜ打たれたのだろうか。田中自身は、3点を失った3回をこう振り返る。

「違いはそんなに感じていない」

そして、スプリンガーにホームランを打たれた場面については、「投げたのはストライクゾーンだったので、本来はもう少し低く投げきりたかった」と語る。

スプリンガーに3ランホームランを打たれたのは、スプリットだった。田中将大が打たれた原因は、この“伝家の宝刀”にある。

試合が始まる前、ヤンキースのOBで、現在はESPNの解説者を務めるA・ロッド氏はこうツイートしていた。

「今日は風が強く、スプリットをコントロールするのは難しいだろう」

この日、ニューヨークはMLBの発表によると気温13.3℃、風速は7.15メートル。そして前日は試合が順延になるほどの悪天候だった。

田中自身が認めるようにスプリンガーに投じたスプリットは高めに浮いた。さらに問題だったのは、悪天候のためかどうかはわからないが、この日の田中将大のスプリットは、アーロン・ブーン監督の言葉を借りれば「いくらかツーシームのようだった」ということだ。

ジョージ・スプリンガーは、速球キラーである。スプリットやチェンジアップのような落ちる系の球種に対する打率は.149だが、直球系の球種に対しては.316にまで跳ね上がる(2019年シーズン)。

また、投球の割合を見てみても、田中将大がスプリットをうまく使えていなかったことがわかる。この日、田中将大が投じた85球中、スプリットは22球(25.9%)。アストロズ打線を6回無失点に抑えた前回登板は、68球中27球(39.7%)だった。

ヤンキースは残りの3戦を全勝しなくてはならない。アストロズの先発は第5戦がジャスティン・バーランダー、第6戦はゲリット・コールが予定されている。窮地に立たされた。