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なぜ田中将大は大舞台に強いのか 理由は“空気の読めなさ?“

2019 10/12 11:00棗和貴
地区Sのツインズ戦で好投した田中将大Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

指揮官も称賛する大舞台での強さ

ポストシーズンには魔物が潜んでいる。カブスはその呪いを解くために100年以上の年月を要したし、3度サイ・ヤング賞を受賞しているドジャースの大エース、クレイトン・カーショウは10月になるとホームランを打たれる確率が2倍に跳ね上がる。

ただ、その魔物も田中将大の前ではおとなしいようだ。2014年、アストロズとのワイルドカードで初めてポストシーズンのマウンドに上がってから、10月5日(日本時間6日)のツインズ戦まで、合計6試合を投げて防御率は1.54。ヤンキースのアーロン・ブーン監督もこの活躍を手放しで称賛する。

「彼は本当にいい働きをする」

伝家の宝刀、スプリットの復活

なぜ田中将大は大舞台に強いのだろうか。まず、特筆すべきは田中将大のコントロールである。

5日のツインズ戦ではスプリットのコントロールが抜群だった。ランナーを置いた場面で田中将大が投じたスプリットのほとんどが、ストライクゾーンの低めギリギリか、ボールゾーンとなっていた。ツインズは今季、MLBのチームホームラン数を更新した強力打線を擁する。ランナーを置いた場面での長打は避けたいところだが、その点においてスプリットはうまく機能していたと言える。

ただ、2019年のシーズン序盤、田中はスプリットの精度に苦労していた。4月と5月のスプリットの被打率は3割を超え、長打率にいたっては4月が.692、5月が.526となっている。

「あらゆることに取り組みました」ツインズ戦の後の会見で、どのようにしてスプリットを改善させたか問われたとき、田中はそう答えている。「いままでにないほど時間がかったが、メカニックなり、グリップなり、いろいろトライするなかで答えを見つけ出せた」

スプリットの精度に苦しんでいた時期は、あらゆる球種を駆使しながら抑えなければならなかった。だが、伝家の宝刀が復活したいま、打ち崩すのはかなり困難であることを、田中将大は地区シリーズの大事な一戦で証明してみせたのだ。

大舞台に強い理由、“空気の読めなさ”も

記憶を楽天時代まで遡ってみれば、田中将大は日本にいたときから大舞台に物怖じしなかった。2013年、空前絶後の24勝0敗を記録した年の日本シリーズ、優勝がかかる試合を前に心境を聞かれた田中は「とくに変わったことはない」と言った。

そして今年、彼は当時と同じような発言をしている。ポストシーズンの初戦を前にした記者会見でなぜ大舞台に強いのか質問された田中は淡々と「それについては、深く考えてない」と言ってのけた。

この超然とした感じ。周囲を気にせずに自分のやるべき仕事をこなす集中力。先のツインズ戦で見せた逆境の場面で発揮される自制心。あるいは、フランク・シナトラの美声がお似合いのヤンキー・スタジアムで、ももクロを登場曲に選ぶことができる“空気の読めなさ”……。

とにかく、どんな状況でも自分らしくいようとする強さが、大舞台で田中将大が活躍できる要因なのではないだろうか。