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選抜高校野球で優勝狙う市和歌山・小園健太は「ブレない剛腕」

2021 2/23 06:00沢井史
市和歌山・小園健太ⒸSPAIA(撮影・沢井史)
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ⒸSPAIA(撮影・沢井史)

注目の最速152キロ右腕

「芯がすごく強いですね」

市和歌山の小園健太を一言で表すとどんな投手なのかを、投手を担当する舩津直也コーチに尋ねると、こんな答えが返ってきた。

昨夏の練習試合で最速152キロをマークし、一気に注目を集めた右腕は、高校入学直後の1年春からマウンドに立ち、夏には140キロ半ばの速球を投げ込み、早々から関係者を唸らせていた。市和歌山を今後どこまで押し上げていくのか、早くから将来も嘱望されていた。

だが、小園にとって空白だった時期がある。その直後の1年秋だ。ベンチ入りはしていたが、その速球は鳴りを潜めた。フォームのバランスを崩し、調子を落としていたのだ。

「どこかを痛めたとか、違和感があったわけではないんですけれど…。投げていくうちにおかしくなって、ボールが思うように走らなくなったんです」

1年上に一昨春のセンバツ8強入りの原動力となったエース左腕・岩本真之介がおり、その秋は岩本が主戦を担っていたとはいえ、マウンドに立てない悔しさは計り知れなかった。チームも秋の県大会の準決勝で敗れて近畿大会出場を逃し、長い冬を過ごすことになった。そのため、昨冬は体作りとフォーム固めに時間を費やし、体の細部までを見直すことに努めた。

春季大会から実戦復帰するはずが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で復帰は見送られた。休校、練習自粛と思うように練習できない時間もあったが、その時間を体作りなど鍛錬の時間にしっかり充てられたことも、現在の小園に繋がった部分は多いのかもしれない。

「やるからには頂点目指す」

念願だった大舞台行きが正式に決まった1月29日。小雪がちらつく極寒のグラウンドで、多くの報道陣に囲まれた小園は、甲子園への思いを口にした。

「ずっと目指してきた場所でした。やるからには頂点を目指してやっていきたいです。でも、速球だけにこだわるつもりはありません。150キロを超える球は投げたいですが、平均で140キロ後半のスピードで投げられるようになりたいです」

ただ、小園はいわゆるゴリゴリの剛球投手ではない。変化球の出し入れ、制球力、ピッチングの巧さ…どれにおいても勝負ができる。先を見て自ら行動し、そのコメントから頭の良さも感じるが、小園の最大の武器は“ブレなさ”ではないだろうか。

とにかく流されない。自分に合うものは何かを探し、それに見合った練習法を編み出す。周囲で流行っているもの、世間を席巻する投手が現れても、一度は目にしても、それに近づけずこれまで追求してきた自分に合うものを貫き通す。前述の舩津コーチが明かした「芯の強さ」とは、まさにこのことだ。

そんな素性を、夢の大舞台のマウンドでも体現してほしい。念願だった聖地で投げる日は刻一刻と近づいている。

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