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東京五輪で引退する男子マラソン大迫傑は有終の美を飾ることができるか

2021 8/4 11:00富田明未
大迫傑,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

8日号砲、中村匠吾、服部勇馬、大迫傑の3人出場

東京オリンピック男子マラソンは8月8日午前7時から、札幌大通公園発着のコースで行われる。日本代表として中村匠吾、服部勇馬、大迫傑の3人が出場する。

男子マラソンでは、1992年のバルセロナ大会で森下広一が銀メダルに輝いて以来、メダルを獲得した日本人選手はいない。3人の中から29年ぶりのメダルを獲得する選手は出てくるだろうか。

男子マラソン日本代表選手の自己記録,ⒸSPAIA


大迫は2020年3月に開催された東京マラソンで2時間5分台の記録をマークした。代表選手の中で一番速いタイムであり、今回のレースでも期待が高まる。日本人選手は東京オリンピックでメダルを獲得できるのか、前回のリオデジャネイロ大会の記録と比較してみよう。

リオデジャネイロ五輪男子マラソン,ⒸSPAIA


マラソンは気候やコースによってタイムに影響が出るため単純比較はできないとはいえ、3人の自己記録は優勝タイムを上回る。

今回マラソンが行われるコースは異例の周回コースであり、直角カーブが40カ所もある。集団でポジションを取る際は、足に負担がかからないよう注意が必要。コースにいち早く順応し本来の実力を発揮できれば、3人ともメダルを獲得できる位置にいると言えるだろう。

東京五輪がラストランとなる大迫傑、最後のレースに期待

7月29日に大迫は、自身のTwitterで東京オリンピックを最後に引退する意思を表明した。

"8月8日のマラソンを現役選手としてのラストレースにします。それは、出し切るため。もう半歩、目標に近づくため。「走る」その究極にシンプルなことに、純粋に向き合う。全編はYouTubeにUPしてます。こんなゴールがあったっていい。"

大迫が今回引退を決意したのは、東京オリンピックを競技人生の最高のゴールにするためだ。「箱根駅伝時代から多くの人を魅了してきた走りを見られなくなる」と惜しむ声が上がっているが、「失敗しても次がある」という状況を作らないことで、自身の持つ全ての力を出し切れると考えたのだろう。

2013年にオリンピックの舞台が東京に決まってからは、全力で練習を積み重ねてきた。アメリカとケニアを拠点とし、地面を蹴る力を鍛えるために不整地でトレーニングすることで、首から腰にかけて走行する脊柱起立筋が浮き出るほどに発達したという。カーブでかかる負荷にも耐えられる筋力を身につけており、8日のレースも大いに期待できる。

大迫に劣らない実力を誇る服部勇馬と中村匠吾にも注目

東洋大学時代に弟の弾馬と一緒に駅伝に出場したことで注目を集めた服部は、箱根駅伝のエース区間の2区で2年連続区間賞を獲得するなど、チームに大きく貢献。そして、卒業後は2018年の福岡国際マラソンで日本選手として14年ぶりの優勝を果たすなど、着実に実力を伸ばしている。

服部の強みはフォームの力強さだ。ジョギングのような楽な姿勢でスピードのある走りを見せる。オリンピックでも力強いフォームに期待が高まる。

そして、駒澤大学4年時に箱根駅伝の1区で区間賞を獲得した中村も、大学駅伝チームで実力を発揮してきた。東京オリンピック日本代表選考レースのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では、服部と大迫を抑えて優勝している。

中村の強みはレース終盤でスピードを出し切ることができる粘り強さだ。MGCでも39.5キロ付近からスパートをかけて他の選手を振り切った。

負けず劣らずの実力を持つ3選手がどのようなレースを展開するだろうか。また、今回で引退する大迫は有終の美を飾ることはできるのだろうか。8日のレースに注目だ。

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