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陸上短距離王国ニッポン!9秒95山縣亮太の東京五輪決勝も現実味

2021 6/9 11:00鰐淵恭市
山縣亮太Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

サニブラウンの日本記録更新

長年、日本男子短距離界を引っ張ってきた28歳が快挙を成し遂げた。6月6日に行われた陸上の布勢スプリントの男子100メートルで山縣亮太(セイコー)がサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が持つ日本記録を0秒02更新する9秒95で優勝した。ここ2年はけがに泣いてきたが、東京五輪を目の前にして、代表争いの先頭に躍り出た。

「記録を出したいと思っていたのでひとまず良かったです。9秒台を突破したかったので、肩の荷が下りました」

レース後の山縣の言葉は、偽らざる思いだろう。かつては、桐生祥秀(日本生命)とともに、日本選手最初の9秒台を期待されたが、桐生に先を越されると、サニブラウン、小池祐貴(住友電工)にも後れを取った。ここ2年はけがや肺気胸で結果が出ずに苦しんでいた。

9秒台の日本選手


これまでは運がなかった面もある。2017年には追い風0.2メートルで10秒00、18年には追い風0.8メートルで10秒00、無風で10秒01をマーク。いずれももう少し、風が吹けば9秒台に突入していた。

今回は逆にぎりぎり公認記録になる追い風2.0メートルでのレースだった。「運なんで、結局。今日はラッキーだったし、それまではアンラッキーだった。10年に1度の風が吹きました」。10秒00や01をマークした時にこれくらいの風が吹いていれば、もっと早く同じぐらいのタイムが出ていた可能性は高い。

今季世界8位!世界大会の決勝進出ラインはほとんど10秒台

さて、この「9秒95」の世界での現在位置を確認したい。

2021年の記録順の世界ランキング(6月8日現在)で見ると、今季8番目の記録である。風やトラックの違いもあるので一概に比較はできないのだが、記録だけで見ると五輪で決勝進出が狙えるタイムだと言える。

2008年北京五輪男子400メートルリレーのアンカーとして銀メダルに輝いた朝原宣治さんは現役時代、「9秒台か、世界のファイナリスト(決勝進出者)か、どっちがすごいと言えばファイナリスト」といった趣旨の発言をしていたことを思い出すが、それだけファイナリストになるということは価値の高いことである。

山縣が9秒95を出したのは、布勢スプリントの決勝で、予選から考えれば2本目のレースだった。五輪、世界選手権は予選、準決勝、決勝と3本あるので、世界大会なら2本目は準決勝にあたる。山県もそのことは意識しているようで、「ここが世界の準決勝だと思って臨みました」と語っている。

2000年以降の世界大会で、決勝進出ライン(準決勝のタイムが最も遅い決勝進出者)で最も速いタイムは2015年世界選手権の9秒99。山縣の想定通り、準決勝で今回の9秒95が出せれば、おそらく問題なく決勝へ進めるだろう。ただ、本人も楽観はしておらず、「世界の準決勝は風がなくてもこれぐらいのタイムで走らないといけない。もう一歩前進しないといけない」と気を引き締めいている。

世界大会での決勝進出ライン


山縣というスプリンターの強さはいくつかある。まずは号砲への反応の速さ。2016年リオデジャネイロ五輪男子100メートル準決勝では人間の限界に近い0秒109でスタートした。0秒100を切るとフライングになるので、驚異的な反応だった。これは準決勝を走った22人で最速。さらに過去に10秒00を2回出しているように、アベレージの高さも持っている。そして何より。大舞台での強さが彼の武器である。

2012年ロンドン五輪の100メートル予選では当時の自己ベストとなる10秒07で準決勝進出。4年後のリオデジャネイロ五輪では準決勝で自己ベストの10秒05をマークした。この大舞台の強さが東京で発揮できれば、ファイナリストにぐっと近づくことができる。

五輪参加標準突破5人は米国に次いでジャマイカと並ぶ2位タイ

布勢スプリントでは、多田修平(住友電工)が10秒01をマーク。これで五輪参加標準記録(10秒05)を突破した日本選手は桐生、サニブラウン、小池、山縣、多田の5人となった。

6月8日現在、男子100メートル五輪参加標準記録突破者は世界で39人。国別で見ると、米国の19人が最多で、続くのが日本とジャマイカの5人である。気がつけば日本は世界の短距離王国と数字の面では肩を並べている。

東京五輪の100メートルの1カ国の出場枠は最大3人。標準記録突破者に加え、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)も代表入りを狙う力がある。五輪代表が決まる日本選手権は6月24日に開幕する。

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