「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

紀平梨花が五輪女王ザギトワと世界フィギュアで直接対決

2019 3/18 07:00田村崇仁
紀平ザギトワ,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

さいたまスーパーアリーナで20日開幕

フィギュアスケートの世界選手権が3月20日から23日までさいたまスーパーアリーナで開催される。日本勢は男子の羽生結弦(ANA)、宇野昌磨(トヨタ自動車)、田中刑事(倉敷芸術科学大大学院)、女子の紀平梨花(関大KFSC)、坂本花織(シスメックス)、宮原知子(関大)が出場。大きな見どころは平昌冬季五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(ロシア)と、昨年12月のグランプリ(GP)ファイナル、四大陸選手権と合わせた「3冠」が期待される紀平の直接対決だろう。

紀平とザギトワは16歳の同い年

今季躍進する紀平とザギトワは16歳の同い年。GPファイナルで直接対決した。この試合で紀平はショートプログラム(SP)でルール改正後の世界最高得点82.51点をたたき出し、初出場優勝の快挙を成し遂げた。

一方、ザギトワは昨年9月にドイツで行われたネーベルホルン杯のフリーで158.50点、合計でも238.43点といずれも世界最高得点をマーク。2人のハイレベルな争いは小さなミスが勝負を分けそうだ。

GPファイナル表,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA


フィギュアの得点はジャンプとスピン、ステップを評価する「技術点」と表現力や音楽の解釈などを評価する「演技点」の合計点で競う。GPファイナルではSPで紀平が82.51点で首位に立ち、ザギトワは77.93点の2位で追う展開だった。

2人の点差は4.58点。この時は紀平が冒頭で高難度のトリプルアクセル(3回転半)ジャンプを決めたことが大きく、トリプルアクセルだけで基礎点8点に出来栄え点(GOE)の2.51点を加え、10.51点をマーク。「技術点」で5.26点ザギトワを上回った。「演技点」ではわずかに下回ったが、0.68点差に縮めたことも重要なポイントだ。

フリーも紀平が150.61点でトップ、ザギトワが148.60点で2位となり、技術点で上回る展開はSPと同じだった。それ以来となる一騎打ちへ世界選手権も高難度ジャンプの出来など技術点が左右するだろう。

不振のザギトワ

ザギトワは直近3大会で優勝を逃すなど一時期の輝きを失っているのが懸念材料だ。GPファイナルに続き、ロシア選手権でも14歳のアンナ・シェルバコワが初優勝し、ジュニア勢が表彰台を独占。ザギトワは5位、平昌五輪銀メダルのエフゲニア・メドベージェワが7位に終わる衝撃的な結果となった。

1月の欧州選手権ではフリーでジャンプでの転倒などミスが相次ぎ、16歳のソフィア・サモドゥロワ(ロシア)に敗れて2位。伸び続ける身長など体の変化に適応しきれていないとの指摘もある。だがロシアの地元メディアによると「ライバルは自分」と五輪女王の意地をのぞかせ、来季を視野に4回転ジャンプの練習も始めるなど復調の兆しもあるようだ。

紀平比較表,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

国際大会6連勝

優勝候補の紀平はシニアデビューした今季の国際大会で負けなしの6連勝中。2月のチャレンジ・カップ(オランダ)でもSP2位からフリー1位と巻き返し、合計208.34点で今季4度目の逆転優勝を遂げた。「逆転の紀平」は代名詞になりつつあるが、SPの出遅れが課題といえば課題だろう。

2月の四大陸選手権では公式練習で左手薬指を負傷し「第2関節の亜脱臼」と診断される中、フリーでトリプルアクセルを成功し、SP5位から逆転。冷静な判断力と対応力の高さも強さを支えている。武器のトリプルアクセルは国際大会のSPで一度しか成功しておらず、世界選手権で表彰台の真ん中に立つには大きな鍵を握りそうだ。

羽生の復活あるか

男子は右足首故障からの復帰を目指す冬季五輪2連覇の羽生がどんな演技を見せるかに注目が集まる。年が明けてから氷上練習を始めており、世界選手権へ調整中だ。今季のGPシリーズは2連勝したが、昨年11月のGP第5戦、ロシア杯の練習中に右足首の靱帯などを損傷したことが影響し、12月のGPファイナルと全日本選手権を欠場した。

平昌五輪銀メダルの宇野は四大陸選手権で合計289.12点をマークして逆転優勝。SPで4位と出遅れたが、フリーで2種類計3度の4回転ジャンプを成功、ルール改正後の世界最高となる197.36点を出して1位となった。

着実に成長を続ける宇野は五輪や世界選手権、GPファイナルを含めたシニアの主要国際大会で初の金メダル。羽生との日本人対決も大きな注目を集めそうだ。

最大のライバルはチェン

日本勢に立ちはだかる最大のライバルは2連覇を目指す4回転ジャンプの申し子、ネーサン・チェン(米国)。1月の全米選手権で驚異的な合計342.22点をマークして3連覇を達成し、勢いに乗っている。 2連覇した昨年12月のGPファイナルの演技構成を変え、フリーは冒頭のルッツ、フリップ、トーループの3種類、計4度の4回転ジャンプを鮮やかに決めた。昨年の平昌五輪は重圧に屈して失意の5位に終わったが、出来栄え点の幅が広がった新たな採点方式で完成度の高いジャンプを武器に日本に乗り込む。