不動の4番・筒香嘉智の動向が影響
東京五輪のクリーンナップを考察するにあたり、近年の安定した成績と国際大会の経験という観点からみれば、DeNAの筒香嘉智が4番候補の一番手となるだろう。2017年に開催された第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも不動の4番を努め、ここぞの場面で値千金の一発を放つなど確かな存在感を示した。
しかし、筒香は昨季の契約更改交渉の席で、2019年オフにメジャー移籍するためのポスティングシステム(入札制度)利用容認を球団側に求めている。メジャーリーグを統括するMLB機構はメジャーリーグ登録選手には東京五輪予選・本選への出場を認めていないため、その場合は侍ジャパンへの招集はなくなる。ただ、残留も選択肢の中にあると語っており、筒香が東京五輪に対してどういう思いを抱いているかもメジャー挑戦への判断材料のひとつになりそうだ。
仮に筒香がメジャー挑戦となった場合には、侍ジャパンの4番の座が空き、クリーンナップの顔ぶれにも動きがありそうだ。ソフトバンクの柳田悠岐、西武の山川穂高、巨人の岡本和真、オリックスの吉田正尚、ヤクルトの山田哲人、広島の鈴木誠也らが食い込んでくると予想されるが、どんなクリーンナップを組むべきなのだろうか。
勝負強いフルスイングコンビに期待
最も期待したい一人が柳田だ。これまで怪我の影響などで第1回プレミア12や第4回WBCといった主要国際大会へ出場できておらず、「金メダリストになりたい」と語るなど東京五輪出場へ並々ならぬ意気込みを見せている。
昨秋に開催された日米野球では、第1戦でサヨナラ2ランを東京ドームのバックスクリーンにたたき込むなど、打率.318、2本塁打の活躍でメジャーの首脳陣や選手らに強烈なインパクトを与えた。2015年にはトリプルスリーを達成しており、侍ジャパンの稲葉篤紀監督が掲げる「スピード&パワー」を実践する上でもマッチした打者といえる。
そしてもう一人が、3月9日~10日に行われたメキシコとの強化試合で侍ジャパン初招集となった吉田だ。第1戦の第一打席でいきなりタイムリーを放つと、第2戦では4番に抜擢。初回の満塁のチャンスでは、2球目の真ん中低めの直球をとらえると打球は弾丸ライナーでライトスタンドへ一直線。侍ジャパン・トップチームでの1号が衝撃的なグランドスラムとなった。
柳田や吉田は、外国人特有の動く球にきっちり対応。スイングを崩されることもほとんどなかった。一方、同じく日米野球に出場した山川や岡本らは特有の軌道に苦戦。岡本は本塁打で最低限の仕事はしたものの、両選手ともに本来の力は出し切れなかった。ボールへのコンタクト、対応力では柳田や吉田が一歩リードしている。
過去の五輪のクリーンナップ
過去の五輪に出場した日本代表のクリーンナップを振り返ってみる。まずは2000年のシドニー五輪。それまでアマチュアの選手で構成していた日本代表に、松坂大輔(当時西武)らプロの選手が初めて参加した。
中村紀洋(当時近鉄)が主に4番に座り、松中信彦(当時ダイエー)、田中幸雄(当時日本ハム)が脇を固めた。予選リーグでは、田口壮(当時オリックス)や阿部慎之助(当時中央大学)がクリーンナップに入ることもあったが、基本的には前述の3選手でクリーンナップを形成。各選手ともに高打率、高出塁率をマークし、プロのレベルを証明した。
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2004年のアテネ五輪はオールプロで参加。高橋由伸(当時巨人)が3番に入り、城島健司(当時ダイエー)が4番、シドニー五輪で4番を任されていた中村が5番に入った。クリーンナップ以外にも福留孝介(当時中日)や和田一浩(当時西武)らで強力打線を形成したが、オーストラリアに苦杯を喫し(2戦2敗)、悲願の金メダル獲得とはならなかった。
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2008年の北京五輪では、新井貴浩(当時阪神)が4番を努めた。3番には青木宣親(ヤクルト)や森野将彦(当時中日)、中島宏之(当時西武)が入り、5番には稲葉篤紀(当時日本ハム)が入ることが多かった。シドニー五輪やアテネ五輪のクリーンナップと比べると打率・出塁率ともに低迷。韓国に2敗、アメリカに2敗するなど敗戦を重ねてメダルを逃した。
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東京五輪を目指す今の世代の選手達は、過去に出場した選手達と比べて若い頃から国際試合の経験が豊富な上、プロ入り後もプレミア12やWBCといった舞台での経験を積んでいる。柳田、山田、鈴木、巨人の丸佳浩、ソフトバンクの上林誠知、西武の外崎修汰、楽天の田中和基など、走力と打力を兼ね備えた選手も充実、選手層の厚さも十分だ。
勝敗を左右するクリーンナップ。稲葉監督がどんなオーダーを組み、どの選手をクリーンナップに据えるのか。いま候補として挙げられている選手以外にも新たな選手が台頭してくる可能性もある。今秋開催のプレミア12、そして来年の東京五輪を直前に控えた2019年シーズン、選手達がどんな活躍を見せてくれるか期待したい。